構造の問題は、現場から変えられないのか?

― 社内コミュニティの次に起こした、もう一つの構造変化 ―

前回は、社内コミュニティを立ち上げ、部門を越えた情報共有に取り組んだ経験を紹介しました。(第5回 経営者のためのDX思考 | 現場から構造は変えられるのか?
業種別に分かれていた営業組織の中で、提案書や提案活動の知見を共有する場を作り、情報の流れを変えようとした取り組みです。

そこでは、部門ごとに閉じていた知識を横につなぐことが、一つの構造変化につながりました。
組織図を変えたわけではありませんが、誰が誰と話し、どの情報がどこに集まるかといった、情報の流れを変えることで構造変化を起こしたのです。

今回ご紹介するのは、もう一つの構造変化の経験です。
舞台は企業の中ではなく、地域で活動していたITと経営に関するNPOです。

この事例で変えようとしたのは、社内の横のつながりではありません。
地域の中にある専門家コミュニティと、地域企業、公的支援機関との関係性の構築でした。

活動はあったが外からは見えにくかった

ある地域に、ITや経営をテーマに活動している団体がありました。
専門家や実務者が集まり、勉強会や情報交換を行っている団体です。

主な活動としては、会員同士の勉強会を定期的に開催していました。

ただ、その活動は完全に内向きな活動となっており、
外部の企業や支援機関から見ると、何をしている団体なのかが分かりにくい状態でした。

地域には、IT活用や経営改善に悩む中小企業が数多くあります。
一方で、ITや経営支援の知見を持つ人たちも地域に存在していました。

しかし、その二つが十分につながっていなかった。
ここに、一つの構造的な欠落がありました。

最初に変えたのは勉強会の開き方だった

構造変化のきっかけは、勉強会の開き方を変えることでした。
それまで会員向けに閉じていた勉強会を、外部にも公開する形にしたのです。

内部の勉強会であれば、参加者は顔なじみが中心になります。
安心感はありますが、外部への影響としては限定的になります。

そこで、外部講師を招き、一般の参加者も参加できる勉強会として企画し直しました。
テーマも、会員だけが関心を持つ内容ではなく、地域企業や支援者にも役立つものを意識しました。

例えば、次のようなテーマです。

・中小企業のIT活用
・クラウドサービスの業務利用
・経営改善とデータ活用
・IT導入を進めるための考え方
・地域企業の事例共有

特別に派手なことをしたわけではありません。
ただ、閉じていた場を、少し外に開いただけです。

公開することで活動の意味が変わった

勉強会を公開型にすると、参加者の顔ぶれが変わります。
会員だけでなく、地域の企業関係者、支援機関の担当者、行政関係者なども参加するようになります。

すると、勉強会の意味も少しずつ変わっていきます。
単なる内部学習の場ではなく、地域の中で課題を共有する場になっていくのです。

例えば、

ある企業のIT導入事例を聞いた参加者が、自社の課題と重ねて考える。
支援機関の担当者が、地域企業に共通する悩みを知る。
専門家同士が、次にどのような支援が必要かを話し合う。

こうした小さなやり取りが、勉強会の中で生まれるようになりました。

活動を外に開くということは、参加者を増やすことだけではありません。
その活動が、地域の中でどのような意味を持つのかを変えることでもあります。

発信しなければ存在していないのと同じになる

もう一つ意識したのは、活動を外に向けて発信することでした。
良い活動をしていても、外から見えなければ、地域の資源として認識されません。

勉強会を開催したら、開催案内を出す。
外部講師を呼ぶなら、そのテーマを分かりやすく伝える。
終了後には、どのような内容だったのかを発信する。

一つひとつは小さな作業です。
しかし、継続して発信することで、周囲の見え方が変わっていきます。

この団体は活動している。
地域のITや経営について継続的に考えている。
企業支援にもつながる知見を持っている。

そう認識されるようになると、外部との接点が増えていきます。
活動は、内側で完結するものから、地域に開かれたものへと変わっていきました。

公的支援機関との関係性構築へ

公開型の勉強会と発信を続けるうちに、公的支援機関との接点が生まれました。
地域企業のIT活用をどう進めるか、どのような支援策が必要かという相談が増えていったのです。

それまで、団体は専門家や実務者の集まりとして存在していました。
しかし、活動が外から見えるようになることで、地域の支援策を考える相手として認識されるようになりました。

例えば、

地域企業向けのITセミナーをどう設計するか。
企業のIT導入相談をどう受け止めるか。
どのようなテーマで支援策を組み立てればよいか。

こうした検討に関わる機会が生まれていきました。

ここで起きていたのは、単なるイベント開催ではありません。
地域の中で、専門家コミュニティと公的支援機関の関係性が構築され、構造の変化が生まれ始めていたのです。

活動が支援策や予算につながっていった

公的支援機関との関係性構築をきっかけに活動がさらに進むと、支援機関の施策検討や予算化にも関わるようになりました。
地域企業のIT活用を支援するために、どのような事業を作るべきかを一緒に考えるようになったのです。

勉強会を開く。
地域企業の課題を聞く。
支援機関と意見交換をする。
その内容をもとに支援策を検討する。

この流れができると、活動は単なる”勉強会”ではなくなります。
地域企業の支援策を生み出すための入口になります。

もちろん、すべてが一気に変わったわけではありません。
最初は小さな勉強会であり、参加者も限られていました。

しかし、継続して活動を開き、発信し、外部と関係性を構築していくことで、その団体の役割は少しずつ変わっていきました。

内向きの学習団体から、地域の課題を拾い上げる場へ。
さらに、支援策を考えるための知見を持つ存在へ。

これは、正に構造の変化だったと思います。

変えたのは制度そのものではなく欠けていた”繋がり”だった

この経験で大事だったのは、最初から大きな制度を変えたわけではないという点です。
行政の仕組みを変えたわけでもなく、公的支援機関の組織図を変えたわけでもありません。

変えたのは、欠けていた”つながり”でした。

会員同士だけで閉じていた勉強会を、外部に開く。
活動内容を発信し、地域の企業や支援機関から見えるようにする。
公的支援機関と対話し、地域企業の支援策に関わる。

この関係性を作ったことで、団体の位置づけが変わり、構造に変化が起きました。

構造を変えるというと、制度改革や組織再編のような大きな話に聞こえます。
しかし実際には、誰と誰がつながるのかを変えるだけでも、構造は動き始めます。

ボトムアップは外に開いたときに力を持つ

この取り組みは、上から命令されたものではありませんでした。
地域の中にある団体の活動を、少しずつ外に開いていったボトムアップの取り組みです。

ただし、内側だけで盛り上がっていても、大きな変化にはなりません。
外に開くことで、初めて周囲から見えるようになります。

見えるようになると、関心を持つ人が現れます。
関心を持つ人が現れると、相談が生まれます。
相談が生まれると、次の活動や施策につながっていきます。

ボトムアップの活動は、外に開いたときに力を持ちます。
自分たちだけの活動から、地域の中で意味を持つ活動へと変わるからです。

DXにも同じことが言える

この経験は、DXにも通じるものがあります。
DXが進まない組織では、活動が内側に閉じていることがよくあります。

担当者だけで検討している。
一部の部署だけで試している。
成功も失敗も、組織の外に共有されていない。

この状態では、取り組みは広がりません。
どれだけ良い活動でも、周囲から見えなければ、組織全体の変化にはつながりにくいのです。

例えば、

小さな業務改善がうまくいったなら、それを社内で共有する。
現場で得られた学びを、別の部署にも見える形で残す。
外部の支援者や専門家ともつながり、別の視点を入れる。

こうした関係性を構築することで、DXは単発の取り組みから、組織の変化へと広がっていきます。

構造は外に開くことで変わり始める

NPO活動の経験から学んだのは、構造は内側だけでは変わりにくいということです。
内側でどれほど良い活動をしていても、外から見えなければ、社会の中で役割を持ちにくい。

逆に、活動を外に開き、発信し、他の組織と接続すると、役割は変わります。
同じ勉強会でも、内輪の学習会から、地域の課題を共有する場へと変わります。

構造を変えるとは、必ずしも大きな仕組みを変えることではありません。

閉じていた活動を開くこと。
見えなかった活動を見えるようにすること。
つながっていなかった相手とつながること。

そこから、変化は始まります。

DXも同じです。
小さな取り組みを閉じたままにせず、社内外に開き、接続を増やしていく。
その積み重ねが、やがて組織や地域の構造を変えていくのだと思います。

今回は、NPOの活動を例に、構造変化への取り組みをご紹介しました。
次回は活用が必須となってきているAIについて触れたいと思います。

まとめ:DXの推進に行き詰まりを感じている方へ


繰り返しになりますが、DXはツールやシステムの問題ではありません。

経営や組織を変革する姿勢が無ければDXは進みません。

DXに取り組みたい
取り組もうと検討している
取り組んでいるけれど上手く進まない

など、DXの推進に行き詰まりを感じている方は、ぜひご相談ください。

私たちの経験が、きっと何等かのヒントになるはずです。

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