はじめに
生成AIの業務活用が進む中で、「問い合わせに答えるAI」の段階から「業務を実行するAI」の段階へと組織の関心が移りつつあります。
Microsoft Copilot Studioは、まさに「業務を実行するAI」を作成するプラットフォームですが、Power Platformとの連携によってAIに統合できる業務や業務システムの範囲を広範囲に広げることが出来るようになっています。
本記事では、Copilot StudioとPower Platformがどのように連携し、 自然言語を起点として業務プロセスを実装・自動化できるのかを、 実務視点で詳しく説明します。
Copilot StudioとPower Platformの役割分担
Copilot StudioとPower Platformの関係性として、Copilot Studioは「対話と判断」を担い、Power Platformは「実行と制御」を担います。
自然言語による指示で処理を進めるにあたって、Copilot Studioは、入力された自然言語から「何をしたいのか」、「どの業務に該当するか」などを判断し、実行すべきアクションを選択します。
その選択されたアクションの実行部分を受け持つのがPower Platformです。
この様に役割分担された2つのプラットフォームを組み合わせることで、AIがユーザーの意図を理解し、 実際の業務処理を安全に進めることが可能になります。
連携の中核となるPower Automate
Power Platformの中でも、Copilot Studioとの連携で特に重要なのが Power Automateです。
Power Automateは、業務プロセスをフローとして定義し、 さまざまなシステムを横断して処理を実行できます。
また、Power Automateでは、様々なシステムやデータベース、クラウドサービスと接続するための豊富なコネクターが提供されています。
その様なPower Automateとの連携として、Copilot Studioは、Power Automateで作成されたフローやコネクターを 「アクション」として呼び出すことができます。
これにより、自然言語の指示が 実際の業務処理へと変換され、AIによる業務プロセスの自動処理が進められます。
Copilot StudioからのPower Automateのコネクター呼び出し
Power Automateには、2026年時点で1,000種類以上のコネクターが提供されており、Microsoft 365、Dynamics 365、SharePoint、Teams、さらには様々なクラウドサービスやデータベースなどと連携するための多数のコネクターが用意されています。
Copilot Studioでは、これらのコネクターやPower Automateのフローを直接呼び出すことができます。
例えば、利用者が 「申請を承認して関係者に通知してほしい」 と指示すると、Copilot Studioが意図を解釈し、対応するコネクターを呼び出したり、Power Automateフローを実行します。
Copilot Studio は、これらのコネクターやPower Automate フローを「実行アクション」として直接呼び出せる点が最大の特徴です。
提供されているコネクターの例やCopilot StudioとPower Automateの連携イメージは次の通りです。
代表的なコネクター例(分野別)
Microsoft 365 / Microsoft基盤系
- Microsoft Dataverse
- SharePoint
- Microsoft Teams
- Outlook / Exchange
- Excel Online (Business)
- OneDrive for Business
- Dynamics 365(Sales / Customer Service など)
これらは、社内業務の基盤として利用されるケースが多く、Copilot Studio × Power Automate の連携で最もよく使われる領域です。
外部クラウドサービス(業務アプリ)
- kintone コネクター
- Salesforce コネクター
- Slack
- Box / Dropbox
- HubSpot
kintoneやSalesforceは、多くの組織で利用されていると思いますが、Copilot Studio から自然言語で指示 → Power Automate 経由でデータ参照・更新という連携が可能です。
データベース/データ基盤系
- SQL Server
- Azure SQL Database
- MySQL
- PostgreSQL
- Oracle Database
- Azure Cosmos DB
これらのコネクターを使うと、Copilot Studioがデータベースに直接問い合わせをし、参照したデータの内容を自然言語で要約して返答するといった処理も可能になります。
Copilot Studio × Power Automateの連携業務
Copilot Studio と Power Automate の連携による業務の流れは以下のようになります。
-
ユーザーが自然言語で依頼
- 例:「kintoneに登録されている〇〇案件の最新状況を教えて」
- 例:「Salesforceの〇〇商談のステータスを△△に更新して、Teamsに通知して」
- Copilot Studioが意図を解釈
- どの業務か
- どのシステムを使うか
- 必要なパラメータ(案件ID、担当者など)
- Power Automateコネクターやフローを呼び出し
- kintone コネクターでレコード取得/更新
- Salesforce コネクターで商談情報更新
- Dataverse や SharePoint に処理ログを保存
- Teams / Outlook コネクターで通知送信
- 結果をCopilot Studio経由でユーザーに返却
- 「更新・通知が完了しました」
この様な一連の流れにより、ユーザーは「どのシステムを操作しているか」を意識せず、会話だけで業務を完了させることができます。
業務実行過程での業務の流れの制御
Copilot Studio と Power Platform を組み合わせた場合、単に「自然言語の指示で業務を実行する」だけでなく、業務実行に必要な情報を利用者とのチャットなどさまざまな方法で取得・補完し、業務を実行するデータとしてPower Automate のコネクターへ引き渡すことができます。
これによって、業務の実行過程で業務の流れを分岐させながら制御することが出来ます。
さらに利用者は、システムの項目や入力・操作方法を覚える必要がなく、会話だけで業務を完了させる仕組みを提供できます。
全体の流れのイメージは次のようになります。
① ユーザーが自然言語で依頼する
利用者はシステム項目や入力フォームを意識せず、次の様な普段使う言葉で依頼を行います。
- 「〇〇社の申請を承認して、関係者に通知して」
- 「この添付資料の内容をもとに見積を登録して」
- 「今月の未処理案件を一覧で確認したい」
この指示の時点では、利用者が必要なパラメーター(会社名、申請ID、期間など)をすべて明示していなくても問題ありません。
② パラメーターを抽出・取得・整理する
Copilot Studio は、利用者の指示内容を解析し、業務実行に必要な情報が不足している場合、次の様な複数の手法で足りないパラメーターや条件を抽出・取得・補完します。
手法1)自然言語文からの直接抽出
利用者の指示文章内に含まれる情報から、会社名、日付、数量、ステータスなどを自動で抽出します。
- 例:
- 「〇〇社」→ 顧客名
- 「今月」→ 対象期間
- 「承認して」→ 実行アクション
手法2)チャットでの追加質問による補完入力
Copilot Studio にチャットで確認させることが出来ます。
- チャット例:
- 「どの申請を承認しますか?」
- 「対象期間を教えてください」
- 「担当者を指定してください」
利用者は上の例の様なチャットに回答するだけで、その内容がパラメーターとして利用されます。
手法3)添付ファイル・文書からの情報抽出
利用者がファイル(PDF、Excel、Wordなど)を添付した場合、その中身を読み取り、必要な値を抽出できます。
-
例:
- 見積書PDFから「顧客名」「金額」「品目」
- Excelから「案件番号」「数量」「単価」
- Word文書から「申請理由」「日付」
抽出された値は、そのまま後続の業務処理の引数として利用できます。
手法4)コネクター経由でのデータ参照による補完
Power Automate のコネクターを利用し、既存システムやデータベースからパラメーターを取得することも可能です。
- 例:
- kintone コネクターで案件IDから詳細情報を取得
- Salesforce コネクターで顧客コードを検索
- SQL Server / Dataverse からマスタ情報を参照
これにより、利用者がすべてを入力しなくても、既存システムのデータを利用し業務処理を実行させることが出来ます。
③ 取得した値をPower Automateフロー実行時にパラメーターとして設定
上記②で抽出・取得・整理した値をPower Automate フローのパラメーターとして設定し、フローを実行できます。
実行されたフロー内では、各種コネクター(Dataverse、SharePoint、kintone、Salesforce 等)に抽出したパラメーターの値をそのまま引き渡し、データ取得・登録・更新・通知などを実行したり、業務プロセスの分岐条件として利用したりします。
Copilot Studio × Power Platform 連携に向いている業務
Copilot StudioとPower Platformとの連携は、特に定型的で判断ルールが明確な業務に向いています。
例えば、各種申請処理、商談管理システムのステータス更新、情報照会と通知といった業務です。
具体的には、人事・総務の領域では、各種申請受付から承認、完了通知までを AIが案内・実行できます。
また、営業領域では、案件情報の登録や更新、関係者への共有を自動化できます。
まとめ:AIと業務基盤をつなぐ実装モデル
以上の通り、Copilot StudioとPower Platformの連携は、自然言語による業務システムの操作を実現する仕組みです。
特に、Power AutomateのコネクターをCopilot Studioから呼び出せる点は、AIを業務プロセスの中心に据える上で欠かせない要素です。
この構成を組織内に展開することで、「人が操作する業務システム」から「AIが業務の作業を担う組織」へと段階的に発展させていくことが可能になります。
CIOコネクティッドでは、お客様の状況や課題に応じて、AI活用の検討やCopilot StudioとPower Platformの導入、定着化まで全般的に対応しています。
ぜひお気軽にご相談ください。





