はじめに
Power Platformの導入を検討する企業にとって、最初の検討内容がプロジェクトの成否を左右することがあります。
システムや組織の大小ではなく、どのような規模のプロジェクトにおいても本記事で解説しているポイントは重要です。
また、Power Platformの導入に限らず、全てのITシステムの導入やDXの推進においても同様に重要です。
特に中小企業や中堅企業においては、社内のIT人材不足や組織全体でのIT活用に対する意識の低さ、経験不足などから十分な検討をせずに導入を進めた結果、導入しても使われないシステムになったり、いつまで経ってもプロジェクトが完了しないなど、コストと時間だけが消費されてしまうことがあります。
本記事では、プロジェクトの成功確率を高めるために、最初に検討すべき重要なポイントを整理して解説します。
1.現状の業務課題とプロジェクトのゴールを明確にする
導入検討の第1歩は、現状の業務課題が何かを正確に理解し、課題を解決した結果、どのような価値を創出したいのかを明確にすることです。 実際には、以下の点を検討時に整理しておくことが重要です。
- 現在の業務で最も工数がかかっている作業は何か?
- 改善後にどのような状態になれば成功とみなすか?
- 定量的なKPI(削減時間・件数・ミス削減効果)はどう設定するか?
この“現状とゴールの明確化”により、プロジェクト完了後に導入効果を見える化し、関係各所と効果を共有しやすくなります。
2.データの設計と整合性をどう担保するか
Power Platformは、最初に小さな業務で導入し、徐々に活用範囲を広げていくという展開手法が効果的ですが、その場合、最初のデータ設計が極めて重要になります。
無計画なデータ設計で導入を進めていくと、データが各所へ分散し、将来的に正しいデータが分からなくなったり、処理が複雑になるなど、システムのメンテナンスや拡張が困難になってきます。
導入の前段階で検討したいデータ設計のポイントは以下の通りです。
- データはどこに置くのか(Dataverse / SharePoint / SQL Server / Excel など)
- データモデルの統一と正規化の方針(項目の命名規則や選択値の値の統一など)
- データの品質・重複・履歴管理のルール(データの保持期間や価格・商品名など変更の可能性のあるデータの変更ルールなど)
これらを先に議論しておくことで、後々の自動処理やデータ分析設計がスムーズになります。
3.社内のITリテラシーの向上・IT人材育成計画の立案
導入プロジェクトがうまくいくかどうかは、実際にそれを使いこなす利用者のスキルに大きく左右されます。
特にPower Platformの様な「現場担当者での積極的な活用が成功のカギ」となるDX関連のプラットフォームについては、リテラシーの向上と人材の育成が重要です。
以下の点は初期検討時に整理しておきたいポイントです。
- IT人材だけでなく、現場担当者含めた現状のITスキルレベルの棚卸し
- プラットフォームやシステムの活用支援計画・トレーニング計画の立案
- 社内での“ヘルプデスクの役割”を誰が担うか
単にシステムを導入するだけでなく、現場に定着化するまでの体制構築を検討することが重要です。
4.部門横断業務プロセスの定義と担当者の設定
Power Platformは1つの部門だけではなく、例えば、営業・配送・生産・仕入・会計など、部門横断で運用されることが多いツールです。
導入初期は1部門でのみ利用する場合でも、後々、他部門へ展開していくことを視野に入れ、導入前に次の点を検討しておくべきです。
- どこまでの業務プロセスを横断的に改善するか
- 部門ごとの責任や役割、担当者などの明確化
- プロジェクト完了後も継続して改善する“プロセスオーナー”の設定
これらを初期段階で設定しておくことで、導入後の混乱や利用停滞などの発生を防ぐことが出来ます。
5.ライセンス・コスト構造の理解と最適化
Power Platformは多数のライセンス形態があり、利用形態によって最適構成が変わります。
また、Microsoft 365と連携させながら利用することも考えられますので、検討時には以下の点について整理する必要があります。
- Power Apps / Power Automate / Power Pages / Power BI の必要ライセンスの見積もり
- Microsoft 365の各種ライセンスとの統合の可能性についての確認
- 利用拡大を見据えたコストシミュレーション
最初にコスト構造と社内ポリシーを整理することで、導入後に予想外の支出を抑えられます。
6.セキュリティ・コンプライアンス要件の確認
企業によってはセキュリティポリシーや情報管理ルールが厳格に定められています。
システムやデータに対するアクセス権限の設定はもちろんのこと、情報漏洩などの事故を防ぐためにも、検討初期段階で次の項目を確認しておくことが重要です。
- システムやデータに対するアクセス制御と権限設計の基本方針
- クラウドでのデータの保存・共有に関するコンプライアンス要件
- 監査ログの取得と保持ポリシー
Power Platformは、認証基盤としてAzure ADを利用できるため高いガバナンス設計が可能ですが、適切な方針を検討段階で確定しておくことが大切です。
7.運用ルール・エスカレーション設計
どんなに優れたツールを導入しても運用ルールや利用者の支援体制が曖昧だと現場での利用が進まなかったり、問題発生時の解決が遅くなったりします。
初期段階で検討すべき運用設計の項目は次の通りです。
- 業務フロー変更時の承認プロセス
- エラー発生時の対応フロー
- 利用者からの問い合わせ対応窓口
特にPower Automateの業務フローやDataverseのデータ構造に変更が必要となった場合の対応体制を検討しておくことが重要です。
8.成功指標(KPI)と評価・改善サイクル
導入検討段階から、何をもって成功とするか(KPI)を決めておくことが重要です。
プロジェクト初期に以下の指標や評価方法を検討しておくと、導入後も改善のサイクルを回しやすくなります。
- 時間削減効果(例:承認作業が何%短縮したか)
- エラー削減数(例:導入前の手作業によるエラー数、導入後のエラー数)
- 利用率・定着率(例:利用対象者の何人が利用しているか)
- 部門ごとの改善度評価(例:部門横断業務における各部門の改善度)
これらのKPIを導入初期に設定することで、導入効果を定量的に評価し、継続的な改善施策につなげることができます。
まとめ:まずはご相談を
Power Platform導入は単なるシステム導入ではなく、業務変革プロジェクトです。
そのため最初の検討段階で業務課題・データ戦略・運用体制・評価指標を整理することで、導入後の成功確率を大きく高めることができます。
CIOコネクティッドでは、Power Platform導入の初期設計から運用設計、定着化支援まで一貫して支援しています。
「どこから始めれば良いか分からない」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。



